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2011年11月12日 (土)

野田首相 TPP参加表明で、ちょっと思い浮かんだ 幾つかの事柄

本日(11月11日)の野田首相のTPP参加表明で、
ちょっと思い浮かんだことが幾つかありますので、
ご参考までにお話しさせていただくとともに、
これらの論点について、私の懸念を払拭される説明がなされることを期待しています。


1.TPPとEFTA

  最初に思いつくことは、TPPは、EFTA と 同じではないかということです。

  EFTA(欧州自由主義連合 European Free Trade Association)とは

  1960年 EEC(欧州経済共同体)に対抗するために
  イギリスを中心となって設立した自由貿易連合ですが、
  イギリス始め主要国がEUに加盟し、事実上吸収されました。

  (現在でも、スイス、アイルランド、ノルウェー、リヒテンシュタイの4カ国で
   存続しています)

  (注)1960年EFTA発足時の加盟国
     イギリス、オーストリア、スウェーデン、スイス、
     デンマーク、ノルウェー、ポルトガル

     <出所> ウィキペディア 


  中国、ASEAN、インドとの連携しなければ、
  アジアの成長力を取り込めないでしょう。

  EECに対抗して EECの周辺国を糾合し敗れた イギリスの轍 を、
  アメリカが繰り返して、それに日本も引きずり込まれなければいいのだがな、
  との感じがしています。


2.ブロック経済圏

  TPPを TPPに参加していない国から見ると
  TPPとは「一つのブロック経済圏」を形成することではないでしょうか。

  「今回、ここで参加しなければ、決まったルールを押しつけられるだけ」
  との説明が聞こえてきますが、

  これは、
  自分たちの決めたルールに従わない国は排除するよということであり、
  まさに
  TPPが、ブロック経済圏であることを証明しているような気がします。

  だとしたら、
  日本がTPPに参加したら

  TPPに非参加のアジアの成長の主力の国々と、
  協調ではなく、競争(対抗)することになるだろうと思いますが、

  日本の今後の経済発展のために、
  ベストな選択だと言うことになるのでしょうか。


3.ポツダム宣言、アメリカ議会の承認

  オバマ大統領と野田首相の会談直後から、急にTPP参加問題が浮上してきて、
  日本では、国会の審議も殆ど無く、
  民主党内での党内論議だけで、内閣総理大臣が参加を表明しました。

  (民主党内の党内論議でも、慎重派が多数を占め、
   そのために、参加表明が1日遅れたたと報道されています。)

  普通、国際条約は、
  当事国の政府が参加を決定すれば、交渉が始まりますが、

  日本の交渉参加に、
  半年間のアメリカ議会の審査が必要だと報じられています。

  日本では、国会の承認どころか、議論すら1日しかなされたいないのに、
  何でアメリカの議会の承認を半年間も待たなければならないのでしょうか。

  しかも、その間に、アメリカは交渉をさっさと進展させて、
  日本が交渉のテーブルに着いた時には、決着した項目を日本が押しつけらそうだ
  と報道されています。

  60年前日本はポツダム宣言を有無を言わずに押しつけられました。

  あの時は戦争に負けたから仕方がありませんでしたが、
  今回は、戦争に負けてもいないのに、同じような状況になるのは、
  どういうことなのでしょうか。


4.非関税障壁、国家主権

  アメリカの一番の狙いは、
  農業ではなく、日本の非関税障壁の撤廃でしょう。

  アメリカは、
  アメリカの価値観以外の価値観は、全く認めない国なのです。

  彼らと異なる価値観を有する日本は、全く否定されるものであり、
  一番に否定されるべきものが、非関税障壁なのでしょう。

  非関税障壁を撤廃させる有効な手段は、
  日本の主権を制限することです。

  狂牛病の牛や、遺伝子組み換え作物など、
  日本人が欲しくもないものを、無理やり購入させるために、

  自由貿易を旗印に、
  日本の主権を侵害し、制限しようとしているように感じられます。

  この様なアメリカの態度は、
  19世紀に、戦争までしてアヘンを中国に無理やり買わそうとした
  イギリスを思い起こさせます。

  農業の自由化だけなら、
  FTAでやればよいのではないでしょうか。

  (後記を参照いただきたいのですが、
   日本の農業は、自由化しても十分競争力があると思います。)

  20数項目もの我々国民が殆ど知らない内容が、
  ある日突然決定し、日本の主権が侵されることにならないことを、願っています。


5.治外法権、不平等条約

  今回幕末の開国に例えられ、
  「尊皇攘夷」は「尊農攘夷」だと揶揄されています。

  その例で行くと、明治政府が大変苦労したことが、
  不平等条約の改定交渉だったことを思い起こすべきでしょう。

  今回も、来年夏頃押しつけられたTPPにより、
  数十年間その改定交渉で苦難の道を歩むことにならないよう、願っています。

  ISD条項が、よく話題になるようになってきました。
  これは、まさに
  明治の不平等条約の中の治外法権条項と同じものだろ思います。

  日本政府が決定したことを、
  アメリカの企業が損害を受けたと主張したとき、

  アメリカが支配する国際機関で裁定されるというのは、
  まさに、治外法権以外の何ものでもないと思います。

  ISD条項は、諸刃の刃であり、
  日本もこの条項を要求したい国が多々あることは否定できませんが、

  19世紀の治外法権の条項を、21世紀の条約のなかに規定するのは、
  あまりに知恵がなさ過ぎるのではないでしょうか。

  ISD条項が、本当に必要な場合の対処方法について、
  別の規定を考えるべきだと思います。

  少なくとも、一企業が、外国の政府を訴える規定は、外すべきで、
  そのような事態の時は、関係当事国の政府同士の外交交渉で解決するように
  すべきだろうと思います。  


5.デフレ経済の脱却

  野田首相は、
  日本の成長戦略のため、デフレ脱却のために、
  TPPへの参加が必要と お考えになっておられるように感じられます。

  私は、TPP賛成派、反対派を含め、
  私の知る範囲の全ての経済学者の「デフレ脱却論」について、
  大いなる疑問を持っています。

  デフレは、
  「供給が需要を上廻るから生じる」と説明されておられますが、
  この定義は、その通りであろうと思います。

  問題なのは、
  供給とか、需要を議論する際に、日本国内だけを対象にしていることです。

  確かに、
  国内の供給力が、需要を大幅に上廻っていることは事実だと思います。

  でも、
  中国、ASEANの供給力が、
  日本の需要を満たしていることを議論しないことが問題なのです。

  国内の需要喚起のために 政府が財政出動しても、
  喚起された需要に応じるのは、
  中国やASEANに進出した日本企業を中心とする工場ではないでしょうか。

  これは、TPPに参加してない現在の状況なのです。

  何故、国内の供給力に競争力が無くなったのでしょうか。

  日本の企業が、国内立地していることによる最大のデメリットは、
  関税ではなく 為替だ と、思います。

  日本経済の競争力が高まることにより、円高になることは
  やむを得ないことだろうと思います。

  問題は、
  自由競争の中で為替が決定されるのではなく、
  人為的に為替操作をして、利益を享受している有力な国が
  日本の近隣に存在するだろうと思います。

  私は、
  日本政府が最も緊急に行わなければならない最大の外交課題は、
  中国や韓国 の 為替の自由化、マーケットによる為替相場の形成の実現による
  公平な国際競争の環境の整備ではないでしょうか。


< 追 記 >

1989年に冷戦が終了したとき、
これで500年間続いた「国民国家」を枠組みとする歴史が終了して、
人類は、「地域共同体から世界連邦への道」へ歩み出したと、
私が述べても、誰も信じず、誰も振り向いてくれませんでした。

それが、20年経って、
「アジアにおいてもそれなりの歩みが始まったな」と、
ある種の感慨に浸っています。

ただ、注意せねばならないことは、
地域共同体の枠組みの形成を見据えて、
自国の権益をどれだけ確保し、有利な地歩を築くのかという、
激烈な競争が現在行われているということです。

日本は、内向きだとよく言われますが、

まさにその通りで、
今述べた激烈な競争がされていることや、激烈な競争の意味を理解できず、

日本が、どれだけ有利な立場を築くのか、
せめて、マイナスを最小限にするにはどうしたらよいのか、
との姿勢や議論が見られないことが残念です。

今回のTPPの議論をネットで毎日見ていると、反対か賛成との話ばかりで、
TPPの内容についての議論が、殆どされていませんし、

ましてや、
日本にとってどうすれば一番国益にかなう方法なのか、
との議論が聞こえてこないで、

単に「国益」という空虚な単語だけが飛び交っているのを知るにつけ、

戦前の日本と同じで、
日本人は、全く進歩していないな、変わっていないなと、感じられ、
暗澹たる気持ちの毎日を過ごしています。

関税などの自由化、FTAは、
本来 日本が積極的に行うべき議論だろうと思います。

また、
諸外国が実施する前に、自らが関税を撤廃する努力をすべきでしょう。

そのような姿勢がないから、
日本が、追い込まれた形で、最悪の状況に追い込まれていくのでは、
との懸念がぬぐえませんし、

毎日のニュースを見ていると、
その方向へどんどん追い込まれているような気がしています。

最後に、
日本の農業は、自由化すべきだと思います。

こうお話しすると、
農業関係者から大反撃を受けることは重々覚悟していますが、

反論される前に、
次のことをお考え下さるようお願い申し上げます。

1.価格というものは、品質見合で決定されるものです。

  日本の「コメ」は、外国の「コメ」と比べて、べらぼうに高いけど、
  日本の「コメ」は、外国の「コメ」と比べて、滅茶苦茶 美味しいのです。

  外食産業や、コンビニなどの弁当屋さんが、
  「コメ」がまずかったら、いくら安くても売れないので
  ご飯の味は、コストがかかっても維持しろ、というのが鉄則だそうです。

  日本人は、お米の味について、世界一の批評家であり、
  まずい「コメ」に 満足できない民族だ ということを、
  あらためて 思い起こすべきでしょう。

  「コメ」は日本文化そのものであり、
  これは、生産者である農家の皆さんだけでなく
  消費する日本人全員が、「コメ」文化を支えているのです。

  ですから、
  日本の「コメ」が、今後海外に輸出されることはあっても
  外国の「コメ」に駆逐されることは、ぜったいにあり得ないと 信じています。

  もう昔の話になりますが、
  ミカン農家が、「グレープフルーツ」の輸入自由化にあれだけ反対したのに、
  「みかん」が自由化後、グレープフルーツに駆逐されたでしょうか。

  逆に、
  国内の需要が減るどころか、アメリカにミカンを輸出して、
  益々ミカン農家の地盤が強固なものになっているのではないでしょうか。


2.関税自由化後の、日本の「コメ」の最大のライバルは、
  現在の外国の農業ではなく、
  自由化後海外に進出する日本企業が生産する「コメ」だろうと思います。

  でも、
  競争相手(ライヴァル)の存在がその産業を強くするのです。

  海外の日本企業に負けないように、競争力の強化に努力すべきだろうと思います

  そのためには、
  補助金に頼らず、自分の力で産業基盤を強化するにはどうしたらよいのか、
  知恵を出すべきでしょう。

  国際競争力を誇る自動車業界も、
  企業によっては倒産したり、吸収されたりしています。

  競争とはそういうものであり、激烈な競争の中で生き残るための覚悟が、
  日本の農家に現在一番求められているのではないでしょうか。


    < TPP 関連 の ブログ >

    野田首相 TPP参加表明で、ちょっと思い浮かんだ 幾つかの事柄 (今回)
    http://hh05.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-36bf.html  

    野田首相の二枚舌?
    http://hh05.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-51f4.html

    TPP交渉の本質
    ・・・1.TPPは、「自由をどう制限するか」 の交渉である
    http://hh05.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-5437.html

     TPP交渉の本質
    ・・・2.「自由とは何か」を理解していない相手との交渉である
    http://hh05.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-e607.html



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